腰が痛いのに悪いのは「お尻」?痛い場所と悪い場所がズレる理由を26年の経験から

痛みの本当の原因

「痛いところを温めているのに、よくならない」

腰が痛いから、腰を温める。肩がゴリゴリに感じるから、肩に温熱器を当てる。

これって、当たり前のことですよね。私も、それが間違いだとは言いません。

でも、こんな経験はありませんか。痛いところに一生懸命温熱しているのに、なかなかラクにならない。少しよくなったかなー、と感じてもすぐ元に戻ってしまう。

「やり方が悪いのかな」「温熱って自分には無意味?」そう思う前に、疑ってみてほしいことがあります。

場所、そこで合っていますか?

私は温熱療法の施術を26年続けてきました。その中で数えきれないほど見てきたのが、「痛い場所」と「悪い場所」が違う、というケースです。今日はその話を、実例からお話しします。

腰が痛いのに、温熱するべきは「お尻」

たとえば腰痛です。

腰が痛ければ、普通は腰のまわりの筋肉や腰の骨そのものに熱を入れて、ユルめようとしますよね。ところが現場では、腰そのものよりも、お尻の筋肉をユルめたほうが腰がラクになる。そういう例のほうが、むしろ多いくらいなんです。

あるとき、腰に強い重だるさを感じているお客様がいらっしゃいました。マッサージで腰をもんでもらっても、ラクにならないとおっしゃる。

触ってみると、確かに腰はパンパンでした。でも、それだけじゃないんです。お尻もガッチガチ。

そこで、お尻を徹底的に温熱でゆるめました。すると、腰までユルユルに。「ラクになった」と、それはもう喜んでくださいました。

もうひとつ。左肩が、触るとガチガチに凝っている方がいたとします。普通なら、その凝っているところに温熱を入れたくなります。でも私が熱を入れるのは、肩甲骨(けんこうこつ)の下のあたりだったりします。すると、直接触ってもいない左肩が、どんどんユルんでいく。

左の肩コリがツラいという女性がいらっしゃいました。両肩に温熱をしていくと、右はラクになるのに、左はどうにもよくならない。

そこで温熱器をあちこち当ててみると、左の肩甲骨の下が、やたらと熱いんです。

その熱さが治まっていくのと同時に、左肩のコリがきれいに取れて、ラクになりました。

「そんな場所、どうやって決めているの?」と思いますよね。

闇雲にやっているわけではありません。手がかりは2つあります。ひとつは、温熱器を介して手に伝わる硬さ。もうひとつは、お客様の熱の感じ方です。

硬いところは迷わず温熱器を当てる。それでもユルまない時は、その周辺部で熱く感じるところを探してみる。

痛みであれ、筋肉のコリ感であれ、あなたのツラさや不調の原因になる皮膚の熱センサーが敏感になっていることが多く、同じように温熱器を当てても「そこだけ熱く感じる」というかたちで、はっきり浮かび上がってきます。時にはお客様が急に「熱いっ!」と感じることもあって、熱の刺激がちゃんと神経を伝わっているんだな、とわかる瞬間です。

つまり、あなたのカラダのほうが「ここだよ」と教えてくれる。私はそれを手と熱さの反応で読み取っているだけなんです。

よくある「ズレ」の組み合わせ3つ

26年の現場でくり返し見てきた、「痛い場所」と「悪い場所」のズレには、よくある組み合わせがあります。代表的なものを3つ挙げます。

① 頭痛 → 首

頭が痛いのに、頭そのものに原因が見当たらない。そういうとき、首の筋肉がガチガチに硬くなっていることがよくあります。首の緊張が血流を介して頭痛につながっていく場面を、これまで何度も見てきました。(このメカニズムの詳しい話は、いずれ頭痛の記事で改めて書きます)

② 首こり・肩こり → 肩甲骨の外側や腕

これはぜひ知ってほしいパターンです。

首や肩にコリ感を感じれば、首や肩そのものを柔らかくしたい、と考えるのが普通です。実際、ユルめばその場はラクになります。でも、すぐ戻ってしまいますよね。

理由があるんです。肩甲骨の外側の筋肉は、腕の骨にくっついています。そこが硬くなると、肩甲骨が外側へ引っ張られます。すると今度は、肩甲骨から首につながっている筋肉が、引っ張られっぱなしになる。この状態のまま首や肩だけを緩めても、引っ張る力は残っているので、すぐにツラいコリ感が戻ってしまうんです。

だから私は、肩甲骨の外側をしっかりユルめます。引っ張る力のおおもとがユルめば、姿勢も良くなり、首こり・肩こりが戻りにくくなります。「マッサージや整体をしても、すぐ戻る」の正体は、ここにあることが多いんです。

③ 手の指・手首の痛み → 肘まわり

指や手首が痛いとき、痛みが出ているのは腱(けん)の部分であることが多いです。腱とはよく、スジとも呼びますね。赤い筋肉から白いスジになって、骨にくっついている。

でも、その腱(白いスジ)を動かしているのは筋肉で、とくに指や手首に関係する筋肉は肘のまわりにあります。ですので、肘まわりの筋肉をやわらかくすると、腱にかかるストレスが減って、痛みが和らいでいきます。

たとえ多少の炎症(腱鞘炎=けんしょうえん)があったとしても、痛いところだけを見ない。おおもとの筋肉から整える。これが私の経験からの実感です。

なぜ、痛い場所と悪い場所がズレるのか

「なんで腰が痛いのに、お尻なんですか?」温熱療法の施術中、よく聞かれます。そのとき私は、だいたいこんなふうにお話ししています。

「お尻の筋肉が硬くなると、股関節(こかんせつ)が硬くなるでしょう。股関節が硬くなると、本来そんなに動かない腰の骨にすごいストレスがかかる。腰の骨のストレスがずっとつづくことが、椎間板(ついかんばん)ヘルニアやすべり症、狭窄症(きょうさくしょう)につながることもあると、私は見ているんだよ。そうならないように、腰のまわりの筋肉がさらに硬くなって、腰の骨をかばう。そうすると腰痛が起こることもよくある。だから、お尻を柔らかくして股関節を柔らかくしてあげないと、なかなか腰の痛みはよくはならないんだよ」

つまり、痛みが出ている場所は、全体のバランスの中で「無理をさせられている場所」であることが多い。無理をさせているおおもとは、別のところにある。だから、痛い場所だけをケアしても戻ってしまう。私はそう見ています。

カラダがなぜ熱の刺激にここまで反応するのか、その仕組みの話は、こちらの記事にまとめてあります。
体を温めるとなぜラクになる?「気のせい」じゃない理由

自分で「悪い場所」を探すには

「でも、プロの手がない私は、どうやって悪い場所を見つければいいの?」

大丈夫です。手がかりは、あなた自身の熱さの感じ方です。

自分で温熱器を使う場合も、悪いところ——言い換えると、カラダの中の不調部分とつながる皮膚は、他の場所と比べてはっきり熱く感じます。

正直に言うと、プロが出す「キンッ!」という鋭い熱刺激は、セルフケアではなかなか入りません。でも、ジワーッとした熱刺激でも、「ここだけ妙に熱いな」という違いは、ご本人にはっきりわかります。

背中などの手が届きにくい場所は難しいですが、届く範囲なら、探し方はシンプルです。

  1. 痛い場所のまわりも含めて、同じように温熱器を当ててみる
  2. 「ここだけ熱い」と感じる場所を見つける
  3. そこを、「熱いけど気持ちいい」程度で刺激していく

熱さの感じ方の見分け(キンッとジワの違い)や温度設定は、こちらで詳しく書いています。
三井温熱の温度設定は何度がいい?

注意事項も書いておきますね。

以前、五十肩(肩関節周囲炎=かたかんせつしゅういえん)で、肩の一部分がものすごく痛い方がいました。その方は良かれと思って、いちばん痛いところ、つまり炎症が起きているところに、必死に温熱器で熱を入れ続けたんです。結果、炎症はひどくなり、痛みも増してしまいました。夜も眠れなくなるほど。

痛い場所に熱を集中させ続けることには、こういうリスクがあります。強い痛みがある場所、腫れや熱を持っている場所は、「そこを避けて、まわりやおおもとから」が原則です。温める順番と、やってはいけないケースについては、必ずこちらも読んでください。

三井温熱はどこから温める?順番と戻し方
三井温熱療法 やってはいけないケースは?

まとめ:場所が変われば、結果が変わる

  • 「痛い場所」と「悪い場所」は、違うことがよくあります。腰痛ならお尻、頭痛なら首、首こり・肩こりなら肩甲骨の外側、指や手首の痛みなら肘まわり——26年、くり返し見てきた組み合わせです
  • 痛い場所は「無理をさせられている場所」、おおもとは別にある。だから痛い場所だけのケアでは戻りやすいんです
  • 悪い場所は、熱さの感じ方が教えてくれます。「ここだけ熱い」を探して、熱いけど気持ちいい程度で
  • 炎症が疑われる場所への集中加熱は逆効果。順番と禁忌の記事を必ず確認してください

一生懸命ケアしているのによくならないのは、あなたのせいでも、気のせいでもありません。場所を変えてみる。熱さの感じ方に集中してみる。

それだけで、結果が変わることがあります。

なお、強い痛みが続く場合、腫れ・しびれ・発熱をともなう場合は、自己判断せず、まず医療機関で相談してくださいね。

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