三井温熱療法で「どこから温めればいいの?」と迷ったら、答えはこうです。
理想は、背中(背骨まわり)から。
背中に温熱器をあてるのが難しければ、胸まわり、お腹、お尻まわりです。
この記事では、なぜこの順番なのか、なぜ背中が土台なのか。効果を感じるには少々知識も必要な理由を、私の26年の経験からお話しします。
なぜ背中からなのか?──自律神経の話を少しだけ
サロンでもよく聞かれます。「なんで背中からなんですか? 痛いのは腰なのに」と。
私の答えはいつも同じです。
自律神経(じりつしんけい)には、カラダを緊張させる交感神経(こうかんしんけい)と、カラダを休ませる副交感神経(ふくこうかんしんけい)がありますよね。
コリや痛みで悩んでいる方の多くは、本人にはわからないけど、交感神経がジリジリと緊張しっぱなしになっています。
そうなると、いつもより増して筋肉がかたくなったり、痛みを実際より大きく感じたり、自律神経のバランスが崩れたりするんですね。
だから私は、首の付け根、具体的には頚椎(けいつい)の7番あたりから、胸椎(きょうつい)の10番あたりまで。どのあたりかというと、首の付け根から背中の真ん中より少し下までの範囲に、最初に熱を入れます。
ここに熱が入ると呼吸がスッとラクになり、自律神経が安定した状態になりやすい。
この状態から、いろんな場所に熱を広げていく。
身体は「守る」→「ゆるむ」の順番で変化します。背中で土台を作るというのは、身体を「熱を受け取れる状態」に切り替えてあげる、ということなんです。
手足だけ温めていたお客様の話
以前、こんなお客様がいました。
セルフケアではいつも、手足や胸まわりだけを温めていた方です。月に一度は私のところでプロの温熱を受けにきてくださっていました。
私は提案しました。「もっと根本からカラダを変えていきましょう。背中のセルフケアを覚えると、月一回の温熱の効き方も変わってきますよ」と。
正直に言うと、最初は難渋されていました。背中は、やっぱり難しい。当てる場所も、当て方も、自分ではわかりにくいんです。
そこで、温熱器をどこに、どう当てるかを一つひとつ明確にしていきました。すると、だんだん的確に当てられるようになっていったんです。
変化は、ご本人の言葉にも、私の手にも表れました。
お客様自身、「ラクさが違う」とおっしゃる。そして私が温熱を施すとき、背中──背骨まわりの柔軟性が、はっきりと増していたんです。手で触れればわかります。気のせいなんかじゃありませんよ。
手足や胸だけでも、その場は気持ちいい。でも、土台である背中が変わると、カラダ全体の変わり方がまるで違う。このお客様が、それを教えてくれました。
でも、背中のセルフケアは、正直むずかしい
ここは包み隠さず言います。背中は、私のいちばんの推しであると同時に、セルフケアでは一番むずかしい場所です。理由は3つ。
1. 体重の問題
仰向けに寝て背中の下に温熱器を入れると、体重がかかります。フローリングや畳の上だと、硬い骨と硬い温熱器が当たって、あまり気持ちよくない。
2. 熱くなりすぎる問題
体重がかかるぶん、着ている服が薄すぎたりすると、すぐに熱くなってしまう。しかも体重がかかっているから、熱くてもすぐに温熱器を動かせない。だから、リラックスどころではありません。
3. 動かす工夫の問題
肩甲骨(けんこうこつ)や首元へ温熱器をあてるには、それなりの工夫が要ります。
だから、初心者は無理に背中から始めなくていい。胸まわり、お腹まわり、お尻まわりに、やさしく温熱器を当てるところから始めてください。
まずは、「熱いけど気持ちいい」を感じられたら、それで十分です。
背中の本格的なセルフケアは本来、プロが教えてあげるべき領域だと私は思っています。近くに専門家がいない方のために、背中温熱のコツは、別の記事で詳しく書く予定です。
「症状のあるところ」ばかり温めない
もうひとつ、セルフケア初心者がよくやる失敗があります。痛いところ、ツラいところばかりに熱を入れてしまうことです。
気持ちはわかります。腰が痛ければ腰を、足が冷えれば足を温めたくなる。
でも、症状を感じるところばかりに温熱を入れすぎると、体のバランスが狂ってしまい、かえってだるくなったり、痛みが増す場合もあるんです。
「冷え=足先」と思って、最初から足だけを強く温める方も多い。足先はたしかに大事です。ただし、身体全体が熱を受け取れる状態になってから仕上げる場所。
身体がまだ緊張しているのに足先だけがんばって温熱しても、その場は熱いのに全体はラクにならず、「私に合ってないのかな?」と不安になる。
これは無駄な不安です。すべてはやり方です。順番を守るだけで、同じ温熱器がまるで違う実感をあなたにもたらします。
基本の順番:3ステップ
ステップ1|土台:背中(むずかしければ胸、お腹、お尻)
呼吸がスッと通る、肩がストンと落ちる、全身の力が抜ける。こうなったら身体が「熱を受け取る状態」に入ったサインです。
ステップ2|土台の仕上げ:お尻
背中が難しくても、お尻は比較的カンタンです。5〜10秒で熱くなる温度で温熱すれば、熱いところと気持ちいいところが明確。身体の中心がどっしりするような感覚に。腰痛にもよいです。
ステップ3|胸、お腹
胸もお腹も温熱器をあてやすい。胸の筋肉のコリは、肩こり・首コリの原因の1つ。さらにしっかりユルめれば、呼吸もラクになり、質の高い睡眠にもつながっていくと私は見ています。
お腹も、熱いところと気持ちいいところがはっきり感じられます。熱いけど気持ちいい熱刺激を、タップリしてあげてください。
順番を間違えて重くなったときの「戻し方」
温めたのに動きにくい、だるさが残る、眠れなくなった。
熱を入れる順番や熱の入れ方が、あなたに合わなかったとき、こういう反応が出ることがあります。
温めたことが悪いのではなく、身体がまだ「守る」状態のままだったんです。
戻し方はシンプルです。肩から首にかけて、「気持ちいい」程度のやさしい熱を伝えてください。熱いのはナシです。気持ちいいだけ。
首まわりは、年齢とともに骨のクッション(椎間板/ついかんばん)が古くなってつぶれてきちゃう。そうすると、神経が緊張して、痛みや筋肉のコリをマシマシにしやすい場所です。
だからこそ、ここをリラックスさせるようなやさしい熱をかけていくことで、呼吸が戻り、カラダがもう一度「ゆるむ」に切り替わります。
そして、違和感が強くなる、だるさが増す、呼吸が浅くなる。この場合は無理に続けないこと。その日はいったんやめる判断も、上手なセルフケアのうちです。
よくある質問
Q1. どこから温めるのが基本ですか?
理想は背中(背骨まわり)、むずかしければ胸・お腹・お尻まわりです。
Q2. 順番を間違えると、逆に体が重くなることはありますか?
あります。身体がまだ「守る」状態のままだと、温めてもゆるみに切り替わらず、重さやだるさが残ることがあります。肩〜首のやさしい熱で戻してください。
Q3. 痛い場所を直接温めてはダメですか?
ダメではありません。ただ、痛い場所「ばかり」に入れすぎると、バランスが崩れてかえってだるくなることがあります。土台(背中・胸・お腹)を先に、が失敗しにくいです。
まとめ
- 理想は背中から。むずかしければ胸・お腹・お尻まわりからでOK
- 理由は自律神経。首の付け根〜背中に最初に熱を入れると、呼吸がラクになり、カラダが「熱を受け取れる状態」になる
- 症状のあるところばかり温めない
- 重くなったら、肩〜首に「気持ちいいだけ」のやさしい熱で戻す
どれくらいの熱さがいいかは「温度の決定版」、何分やるか・いつやるかは「時間の決定版」へ。
※本記事は医療行為の代替ではありません。痛み、しびれ、皮膚トラブルなど不安がある場合は無理をせず、専門家に相談してください。
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